Sigfoss Blog

2019/04/28

Pytorch版SSDを改造してベースネットを入れ替えてみる

前回、KerasによるSSD実装を紹介し、SSDを改良するためにベースネットの変更を試すことが有効であるというお話をしました。今回は実際にベースネットを変更し、モデルウェイトを学習してみます。また、今回はKeras版のSSDでなく、KerasとならぶメジャーなDeep LearningフレームワークであるPytorchのSSD実装を用います。

PytorchはDefine by Runと呼ばれる設計思想を採用しているフレームワークで、Facebookが中心となって開発しています。コーディングのお作法はPFNが開発しているChainerに似ていて、(真相は知りませんが) もともとChainerのフォークだという話を聞いたことがあります。私自身、以前はChainerをずいぶん使っていたのですが、最近はKeras、Pytorchを使うことが多くなりました。どうしてもユーザーが多いフレームワークの方が情報が得やすいのが理由ですが、Chainerは優れたフレームワークと思いますので、PFNにはインターネットの巨人に負けずに頑張って欲しい。

さて、Pytorch版のSSDですが、有名なのはAlexander deGrootさんによる実装のようです。これを使ってベースネットの変更をしてみましょう。

YoloやSSDのような、シングルショット型の物体検知のネットワークモデルを設計し、学習して精度を出すことは思いの外簡単ではありません。バウンディングボックスの位置と物体のクラスの誤差をひとつのロスとしてまとめるという、ある意味強引なことをしているせいかもしれません。ディープラーニングは理屈で追い込んでのデバッグが難しく、いきなり複雑なモデルを設計して学習してもうまくいかず、手詰まりになってしまうこともあります。

私が取っているアプローチは、まずは簡単で小さなモデルを実装して学習を行い、精度はともかくとして一度学習に成功させてから、徐々に目標とするネットワークモデルに近づけていくスタイルです。急がば回れ戦法ですね。^_^

前回ご紹介したKerasのSSD実装にはSSD7という小さなモデルの例が含まれています。実際に私がKeras版SSDに新たなベースネットを実装した際には、このSSD7からスタートして変更と学習を繰り返し、少しずつ目標のネットワークモデルに近づけていきました。通常SSDの学習をする際にはベースネットにあらかじめImagenetなどで学習した事前学習済みウェイトを流し込んでから学習をするのですが、SSD7はコンパクトな作りで事前学習済みのウェイトなしで学習が可能です。

今回はこのSSD7をPytorch版のSSDのベースネットとして実装してみます。SSD7の実装と学習に成功すれば徐々に複雑なモデルへと発展させることができるでしょう。

最初にオリジナル実装の動作確認をしましょう。GitHubのレポジトリからPytorch版SSDのソースコードをcloneします。ベースネット(VGG16)の事前学習済みウェイトもダウンロードしてください。

$ git clone https://github.com/amdegroot/ssd.pytorch.git
$ wget https://s3.amazonaws.com/amdegroot-models/vgg16_reducedfc.pth

オリジナル実装を現在の安定版のPytorch(version 1.0)で動かすには少しコードの修正が必要でした。変更したコードをGitHubに置いておきましたので、適当な場所にcloneして置き換えます。

$ git clone https://github.com/ponta256/pytorch-ssd7.git

置き換える必要があるファイルは、train.py、layers/modules/multibox_loss.pyです。ダウンロードしたベースネットの事前学習済みウェイトはweights/にコピーして下さい。あとは学習とテストに用いるPascal VOCのデータをダウンロードして配置します。用意ができたら学習開始。GPUが複数ある人は使用するGPUの番号を指定して下さい。以下のようにLossが下がっていけば学習が始まっています。

$ CUDA_VISIBLE_DEVICES=1 python train.py --dataset=VOC --dataset_root=/mnt/ssd/pascalvoc/VOCdevkit/
~ snip ~
iter 0 || Loss: 28.6335 || timer: 0.2097 sec.
iter 10 || Loss: 16.0207 || timer: 0.2069 sec.
iter 20 || Loss: 16.9850 || timer: 0.2301 sec.
iter 30 || Loss: 14.1764 || timer: 0.2108 sec.
iter 40 || Loss: 11.8755 || timer: 0.2102 sec.
iter 50 || Loss: 10.9065 || timer: 0.2069 sec.
iter 60 || Loss: 10.7621 || timer: 0.2082 sec.
iter 70 || Loss: 10.0153 || timer: 0.2153 sec.
iter 80 || Loss: 10.9170 || timer: 0.2084 sec.
iter 90 || Loss: 8.7300 || timer: 0.2094 sec.
...

放置するとiter120,000まで学習を続けます。学習曲線を引いてみます。

物体検知の精度を測る指標としてはmAP(mean Average Precision)があります。state of the artのモデルではmAPは0.80を超えています。今回のSSD300実装では0.77 (オリジナルの論文も0.77)とのレポートなので、これに近い値がでればよいことになります。

 $ python eval.py --trained_model=weights/VOC.pth --voc_root=/mnt/ssd/pascalvoc/VOCdevkit/
~ snip ~
AP for aeroplane = 0.8284
AP for bicycle = 0.8358
AP for bird = 0.7657
AP for boat = 0.6960
AP for bottle = 0.5078
AP for bus = 0.8508
AP for car = 0.8571
AP for cat = 0.8770
AP for chair = 0.6201
AP for cow = 0.8053
AP for diningtable = 0.7777
AP for dog = 0.8608
AP for horse = 0.8728
AP for motorbike = 0.8342
AP for person = 0.7871
AP for pottedplant = 0.5100
AP for sheep = 0.7665
AP for sofa = 0.7904
AP for train = 0.8635
AP for tvmonitor = 0.7762
Mean AP = 0.7742

一発でこんなに良い値がでることは珍しいのですが、素晴らしいスコアで、問題なく学習できているようです。
続いてSSD7の実装を行います。SSDは受容野の大きさの違う複数の特徴マップから分岐する形で、バウンディングボックスとクラスの推測を行います。標準のSSDはVGG16をベースネットに用い、追加のネットワークを加えて6つの特徴マップからの推測を行なっていますが、今回のSSD7では4つの特徴マップだけを使うことにします。畳み込み層の数もぐっと削り、こんなモデルとします。

SSD7(
  (base): ModuleList(
    (0): Conv2d(3, 32, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (1): BatchNorm2d(32, eps=1e-05, momentum=0.1, affine=True, track_running_stats=True)
    (2): ReLU(inplace)
    (3): MaxPool2d(kernel_size=2, stride=2, padding=0, dilation=1, ceil_mode=False)
    (4): Conv2d(32, 48, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (5): BatchNorm2d(48, eps=1e-05, momentum=0.1, affine=True, track_running_stats=True)
    (6): ReLU(inplace)
    (7): MaxPool2d(kernel_size=2, stride=2, padding=0, dilation=1, ceil_mode=False)
    (8): Conv2d(48, 64, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (9): BatchNorm2d(64, eps=1e-05, momentum=0.1, affine=True, track_running_stats=True)
    (10): ReLU(inplace)
    (11): MaxPool2d(kernel_size=2, stride=2, padding=0, dilation=1, ceil_mode=False)
    (12): Conv2d(64, 64, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (13): BatchNorm2d(64, eps=1e-05, momentum=0.1, affine=True, track_running_stats=True)
    (14): ReLU(inplace)
    (15): MaxPool2d(kernel_size=2, stride=2, padding=0, dilation=1, ceil_mode=False)
    (16): Conv2d(64, 48, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (17): BatchNorm2d(48, eps=1e-05, momentum=0.1, affine=True, track_running_stats=True)
    (18): ReLU(inplace)
    (19): MaxPool2d(kernel_size=2, stride=2, padding=0, dilation=1, ceil_mode=False)
    (20): Conv2d(48, 48, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (21): BatchNorm2d(48, eps=1e-05, momentum=0.1, affine=True, track_running_stats=True)
    (22): ReLU(inplace)
    (23): MaxPool2d(kernel_size=2, stride=2, padding=0, dilation=1, ceil_mode=False)
    (24): Conv2d(48, 32, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (25): BatchNorm2d(32, eps=1e-05, momentum=0.1, affine=True, track_running_stats=True)
    (26): ReLU(inplace)
  )
  (loc): ModuleList(
    (0): Conv2d(64, 16, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (1): Conv2d(48, 16, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (2): Conv2d(48, 16, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (3): Conv2d(32, 16, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
  )
  (conf): ModuleList(
    (0): Conv2d(64, 84, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (1): Conv2d(48, 84, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (2): Conv2d(48, 84, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
    (3): Conv2d(32, 84, kernel_size=(3, 3), stride=(1, 1), padding=(1, 1))
  )
  (softmax): Softmax()
)
 
ベースネットの14, 18, 22, 26層の特徴マップから引き出して位置とクラスを学習するための畳み込み層と接続します。学習をしてみましょう。(ssd7のコードは先ほどのGitHubのレポジトリに含まれています。すいません肝心のモデルの定義ファイルが抜けてたので足しました。2019-05-18)

CUDA_VISIBLE_DEVICES=0 python train_ssd7.py --dataset=VOC --dataset_root=/mnt/ssd/pascalvoc/VOCdevkit/
~ snip ~
iter 0 || Loss: 19.8675 || timer: 0.1143 sec.
iter 10 || Loss: 16.1234 || timer: 0.0686 sec.
iter 20 || Loss: 15.4959 || timer: 0.0844 sec.
iter 30 || Loss: 14.7978 || timer: 0.0883 sec.
iter 40 || Loss: 14.3634 || timer: 0.0743 sec.
iter 50 || Loss: 14.0006 || timer: 0.1233 sec.
iter 60 || Loss: 13.4887 || timer: 0.0879 sec.
iter 70 || Loss: 12.8604 || timer: 0.0718 sec.
iter 80 || Loss: 12.7472 || timer: 0.0760 sec.
iter 90 || Loss: 11.7383 || timer: 0.0828 sec. 
...
KerasのSSD7の例ではクラス数を絞り、udacityデータ使った学習を行なった例を示していますが、今回はPascal VOCで学習していますので、他のモデルと同じようにmAPを測ってみます。単純なモデルですから精度は期待していません。ここから発展させるベースとして、モデルの学習に成功し、物体検知が成功していれば十分。学習に失敗したときのmAPはほぼゼロに近くなりますから、0.20以上の値がでればまずは成功と考えてよいでしょう。

 $ python eval_ssd7.py --trained_model=weights/VOC.pth --voc_root=/mnt/ssd/pascalvoc/VOCdevkit/
~ snip ~
AP for aeroplane = 0.4626
AP for bicycle = 0.4436
AP for bird = 0.1657
AP for boat = 0.2233
AP for bottle = 0.0956
AP for bus = 0.4548
AP for car = 0.5842
AP for cat = 0.4306
AP for chair = 0.1760
AP for cow = 0.3202
AP for diningtable = 0.3279
AP for dog = 0.3550
AP for horse = 0.5273
AP for motorbike = 0.5315
AP for person = 0.4625
AP for pottedplant = 0.0806
AP for sheep = 0.3977
AP for sofa = 0.3500
AP for train = 0.4893
AP for tvmonitor = 0.4010
Mean AP = 0.3640
 

学習はできているようです。単発の写真に対して推論をかけてバウンディングボックスを表示してみます。

python pred_ssd7.py


あまり良い結果ではないですが、動作はしていますね。ここをスタートにもっと複雑なモデルに発展させていくと、こんな結果がでるようになります。

 
今回はSSDのベースネットを変更する手法として、PytorchのSSDに簡単なモデル(SSD7)を実装して学習する手法を解説しました。ベースネットをResNetやMobilenet、 Densenetなどに変更するのはここから少しずつ発展させていけばよいのです。その説明はまた次回以降に。

森 英悟
画像解析,機械学習

シグフォスへのご相談、ご質問はこちらのお問い合わせフォームから24時間受け付けております。
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら